「みんなで決めるゲーム音楽ベスト100」を見直していた。
2007年に初回が開かれて、今年で16回目なのはめちゃくちゃすごいけど、最新の結果を見ると色々と考えることがあったり。
多分、Nintendo Switchのソフトが出揃ってきたであろう2018年の第12回から現在の傾向が出てきているっぽいんだけど、新作タイトル(といってもここ5年の内だけど)の楽曲が上位にかなりの数入るようになってきてる。
最新の16回の上位10曲だと、Switchからの選出が6曲で過半数を占めている。その他には、3DS、PS3、スマホ、PS2から各1曲ずつ。
これ、(明らかに毛色が違うと言う前提で)他の一般の有志主催の音楽系ランキング企画とは違いすぎると思う。
主催サイドや関係者とかがこういう傾向について、何かしらの解説をしていたかどうかは分からないけど、流石に不思議すぎるから、一人のライトなゲーム音楽好きとしてちょっと考えたいです。
基本、第16回ベースで話進めます。
前情報として、私が実機で遊んだのは、任天堂機はだいたい3DSまで。SONY機はPS4まで。SEGA機はセガサターンまで知っている感じです。
まず、これまでのランキングで人気だった曲がことごとく上位に入っていない(第16回だけで言えば、被投票曲数が7800曲弱なので、どこまでを上位とするか曖昧だけど、最上位の50位前後くらいまでをイメージ)。
で、過去に1位になった曲の最新順位がこんなかんじ。
第1回『CHRONO CROSS ~時の傷痕~』(クロノクロス)86位
第3回『バトル#2』(エストポリス)997位
第4・6・13・14回『太陽は登る』(大神)6位
第7回『CROWNED』(星のカービィWii)14位
第10回『VS.スタードリーム』(カービィロボボプラネット)16位
第11回『バンバード ~Piano Version~』(フリー音源)143位
第12回『血の記憶』(ランス10)90位
第15回『いつしか双星はロッシュ限界へ』(カービィディスカバリー)2位
バトル#2とか、シオカラ節のように1位を取った後は右肩下がりのものもあれば、太陽は登るのように複数回で1位かつ、第1回以外のすべてで一桁台。名を冠する者たちのように登場後、一桁台と二桁台前半と高評価のものもあったりする。
コミュニティの特徴が顕著に出ているのは、カービィシリーズのラインナップの多さ。
星のカービィWii以降の「星のカービィ」という冠の付いたシリーズは、リメイク除く5作品のうち、「スターアライズ」以外の4作品が1位を取った曲を持っている。
なんなら、スターアライズも二桁前半順位の楽曲をいくつか出しているので、評価が悪いわけでもない。
なので、投票する層にカービィシリーズのファンか、安藤浩和のファンがかなり多いとも言える。
もう一つの特徴として、初登場1位というのもある。
上記の過去の結果の中で、初登場1位は(第一回を除いて)、8、9、10、12、15の5曲。
シオカラ節に関しては、前回で2位と100票差の異例を叩き出した狂花水月をたった1年で上回っている。
さらに、12回はランス10がワンツーフィニッシュしている。
そして、今年の第16回の1位は初登場であるポケモンSVから『戦闘!ゼロラボ』(ちなみに4位も同作から『戦闘!スター団ボス』)。
最初に書いたように、他の音楽系のランキングと比べると異常なんですよね。
音楽系、と括るならばの話なんですけど。
仮に毎年オールタイムアルバムベストを更新する、という人がいたとして、16回中6回もその年にリリースされたアルバムが1位になることはあるのだろうか。
しばらくぶりに改訂されたRS誌のオールタイムベスト500でさえ、ここまで大きく順位の入れ替えなんて無かったわけですよ。
仮に、星のカービィシリーズをビートルズに置き換えたとしても、当時の年間ベストでビートルズのアルバムが毎度1位と言うこともなかったはず。
そういう違和感(というか、価値観の違い)を元に第16回の結果を見るとかなり変な感じがするんですよね。
そもそもの私自身のゲーム音楽に対する考え方として、どの音楽と比べてもフラットなものだと思うんですよね。
勿論、小規模なインディーとかフリゲとか、そういうのは違うけれど。
あまり良い言葉じゃないかもしれないけど、それなりに名前のある企業が抱え込んでたり、外注したりした職業作曲家が作ってるんですよ(少なくとも、みんなで決める〜にラインナップされるようなタイトルに限っては)。
仕事として依頼を受けて、それに対する成果物として存在して、ちゃんと会議を通った物が大半のゲーム音楽なわけで。
なので、ブルアカのBGMよりも、クロノ・トリガーの方が優れている、みたいなことは言えないし、言わない。
だからこそ、最新が持て囃される傾向がある(ように見える)ゲーム音楽コミュニティに対して変な気持ちになるんですよね。
だって、年を追うごとに過去に最も評価されていた楽曲よりも、評価される(≒人気のある)最新の楽曲が増え続けるってやっぱりちょっとおかしいじゃないですか(別におかしくはないのか...?)
ランキングの傾向が変動したことの要因は2つ考えられるんですよね。
1つ目は、コミュニティ(ランキングへの投票者)の年齢層が低くなった、あるいは世代交代が起きた。
2つ目は、コミュニティの内情自体は変わっていないけど、評価基準などが変わった。
このどちらかなのかなと思います。
まず、世代交代説。
これは恐らく、さすがに当たり前に起きていることだとは思います。当然。
15年前に参加していた人たちが徐々に抜けていき、新たに参加し始めた若い人たちの趣向に寄っていく、ということ。
それが起きれば、プレイするゲームのベクトルも変わるし、年代も変わる。ここ5年くらいのタイトルが人気になる。と言う話。
ただ、この説を考察すると、第1回が開かれた2007年時点でのTOP10の中に、2000年以降のタイトルが大神しかないんですよ。なんなら、TOP30まで見ても4作(大神、AC0、ペルソナ、AIR)だけ。およそ1割程度しかリアルタイムのタイトルが無い。
そう考えると、2023年のランキングに2017〜2022年までのタイトルの楽曲が多く上がることの説明に、世代が変わったから、は説明になりづらいんですよね。初期の時点では世代がほぼ無視されていたので。
と、いうのを擦り合わせて仮説を立てるとすると、ランキングの傾向が変わったのは、2007年と比べて、現在のゲーム好き全体のゲームに向かう熱量(?)や知識(?)、面白さの基準みたいなものに差が生まれた結果だと思います。
2007年(第1回)〜2014年(第8回)はニコニコ動画のゲーム実況が最盛期だったと思います(私もこのくらいの時期めちゃくちゃ見てた)。
この辺の頃のゲーム実況は、プレイされるゲームタイトルがとても多様だったんですよね。
FC、SFCのACTやRPG、海外産ホラゲ、恋愛ゲー、etc。
だから、実際に遊んだことのあるゲームよりも、知っているゲームの数が多かったと思うんですよね(私がそうなだけで、みんながみんなでは無いだろうけど)。
で、この辺とクロスフェードする形で、誰でも無料でカジュアルに遊べるスマホゲーム(パズドラやモンスト)のユーザー増加。旧ハードの人気が低下。
さらに、マインクラフト人気とCOD、BFの流れがあったFPSから、OW、PUBG、Fortnite辺りが人気になり、PCゲームやFPSが主流になったことで、BGMに視点が行きづらくなった。
一方、その影響で、それ以前のソロプレイのゲームの支持が低くなりつつ、固定ファンとティーン人気のある任天堂タイトルだけが伸び続ける、みたいなことになったんだと思います。
(ニコニコも5chも見ない若年層に「みんなで決める〜」の知名度は無さそうなので、実際に世代交代がされているかは疑心暗鬼。)
で、2つ目の評価基準の話。
これはゲームミュージックの内部の話で、技術、システム的に内部音源の進歩があって、次世代機寄りの豪華なサウンドの方が好まれている、かもという話。
前提として、(正確な話ではないけど)ゲームミュージック好きとSFC以前のサウンド(チップチューン含む)を愛好している層は、基本的に全くの別だと思います。
つまり、音源に制限のある古い時代の楽曲よりも、表現力が高い現代の音源が使われた楽曲の方がいいじゃん!になってる可能性があるわけ。
まあ実際、FC→SFC→PS世代→PS2世代の中で一個ずつズレるだけで、かなり進化(8bit→16bit→32bit→64bit)するし、旧世代の音=16bitというわけでは無い。から、PSでも個人的には豪華さを感じる。
けど、ある種の制約の中で限界まで表現を引き出すという部分が、ゲームミュージックの魅力(であり、美学)の一つだし、それがあまり意識されていない流れになっているのかも?とも思う。
ゲームミュージック好きのオタク的感性も、もしかしたら音楽好きとは違うのところもあると思っていて。
だから、多分音楽好き寄りの感性を持っているであろう私は、そういったランキングの傾向に感覚的にフィットしないんだろうと。
で、ちょっと話が戻るけど、世代の違うコミュニティへの参加者も、3DSやPS4、NSがゲームの入り口だったりすると、古い音源を聴けない、みたいな事象も起こりうる(逆に制約の部分に惚れる可能性もあるけど)。
それらが影響して、リリースされて1年も経っていない最新タイトルの楽曲が上位に多くなる理由になっているんだと思います。
上記の2つの理由は、ある種、必然とも言えることなので抗うことが出来ない部分であって、「そういうもの」っていえばそうなる。
明文化されていないし、なんとなくの感覚だけど、「名曲のランキング」ではなく、「人気曲のランキング」になっている気もする。
そもそも、ゲームというコンテンツ自体が時間に左右されやすいんだと思う。
よっぽど個人の思い入れが無い限り、ジャンルによってはソロプレイのゲームはリプレイ性が弱く、1プレイでとことん遊び、クリアしたら、次のゲームへ。という流れの人も少なくない。容量が増えたおかげで、スタートからクリアまでの所要時間も伸びているだろうし。
ボス戦の曲が上位がちなのもそれが遠因。
リプレイによって自分自身で音楽に価値を付随させるのではなく、最後の壮大なシーンに流れるBGMがより印象強く残る。
その分、基本プレイ無料かつリプレイ性が強いスマホゲーが人気なのも頷ける。
今後もスマホゲーがゲーム業界の覇権を取るのだとすれば、過去の据置機のタイトルの影が薄くなっていくこともありうる。
と、いうのが今のゲーム音楽好きの分析。
良し悪しでは無いけど、個人的な感想としては、これまで名曲とされてきたものは、名曲というイメージだけの、過去のものとして扱われてしまうんだろうか、という気持ち。
で、次の話。
2020年に刊行された『ゲーム音楽ディスクガイド』。めちゃくちゃ良い本でした。
あれ、どうだったんですかね。
2も刊行されたし、反響あったんですかね。
マジで狭い視野の観測範囲だと、音楽好きの界隈には反響があったと思うんですけど、ゲーム音楽好き(あるいはゲーム好き)の界隈にはあんまり届いてない印象なんですよね。
なんでそう思うかって言うと、ゲーム好きの視点としては、ゲームミュージックの本質として、ゲームプレイと共にあるから、です。
なので、ゲーム音楽史、あるいはサウンドトラックの内容で紹介される、レアグルーヴ的観点での選盤はそこまで刺さらないと思ってしまう。
ゲーマーにとって、内容を全く知らないゲームの音楽に対して、どこまで価値を見出せるのだろうかと考えてしまう。
逆に、レアグルーヴ的観点でのレコメンドで音楽好きは楽しく、面白く読める今まで知らなかったゲームミュージックを知ることができると思う。
が、あの本はゲーム音楽ディスクガイドでありながら、"ゲームガイド"でもある。
ゲームを勧める上での、一つの視点である音楽という部分をピックアップして、間接的に大量のゲームが紹介されている。
勿論、黎明期のアーケードゲームや入手困難な実機も存在するけど、大半はその気になればプレイできるゲームが多い。
あの本を読んだ音楽好きの中で、あの本で紹介されているゲームをひとつでもプレイした人はいるだろうか?
近しいものとして、アイドル音楽にも思っていることなんですけど、ゲーム音楽でゲームを理解することって不可能なんですよ。
映画で言えば、脚本や劇伴や撮影などを無視して、役者の演技のみで評価する、と同義だと考えていて。
サウンドトラックというカテゴリの中で、作品を知らずとも聴かれているのって、ゲームだけだと思います。
映画もアニメも、大抵は作品を観た人がその延長で聴いている印象。
私はゲーム音楽を楽しむのなら、プレイ動画でもゲーム実況でも良いので、作品に触れないとゲームミュージックに価値が見出せるはずがない、という考え。
そうしないと、その音楽の意味を理解できないまま消費し続けるだけになってしまう。
なので、みんな、ゲームしよう!!!
全然まとまってないけど、今日考えていたことのまとめでした。なんか思ったら追記するかも。