2022年も6月の下旬に差し掛かったところで、今年の上半期(1月から6月まで)リリースの音楽で良かったものや、新譜以外に関して思ったことのまとめです。
まず始めに新譜・音楽の触れ方というか、探し方が変わったという話をします。
去年の冬くらいまではTwitterで話題になっている新譜の情報を見て、それを聴くというのがメインになっていて、その他にストリーミングサービスのピックアップされた物を聴くという感じでした。
そのやり方が悪かった訳ではないし、そういった方法で聴く人を悪くいう意図はないんですけど、その行為に対して少し懐疑心を持つようになりました。
多くのリスナーはとある音楽を聴くまでの段階で必ず他者や特定の情報源に依存しているのだと思います。つまり、自分の音楽的趣味から見て信頼している人の情報を受動的に仕入れる状態。
これが少し嫌になった。
そこで探し方を変えました。
他人のRate Your Musicリストを勝手に覗いて漁る、という手法。
これはこれまでのレコメンドに依存した形では無く、誰かが記録用に残した履歴から気になったアルバムを聴く。そして、そのアルバムを追加しているリストに飛び、また違うアルバムを聴く。
そうすることで、メジャー・マイナー問わず新しい音楽を幅広く触れることに成功しました。
勿論、これも他者に依存していることには変わり無いんですし、正しいやり方とも思ってないんですけどね。
逆に、メジャーな作品であっても接点がなくて全く聴いていないこともしばしばありますけどね。
一応、Twitter上で見かけたいろいろな人の上半期特集を読んだうえで、せっかくなので名前を見かけなかった作品をなるべく取り上げたいと思います。
別にマイナー志向という訳でなく、せっかくなのでね。
基本的にはネットに偏ったリスニングをしている分、インターネット音楽(あるいはインターネット音楽的な側面を持っている音楽)に触れることが多く、トピックもそういったものに寄ってしまいます。
その中でまず最初に印象的だったのがVaporwaveアーティスト、Macroblankの作品群。
MacroblankはVaporwaveのサブジャンルであるBarber Beatsの旗手的存在であり、現在のVaporシーンの作家の中でももっとも著名な一人だと思います。
なぜMacroblankの話なのか。
それは、2021/05/23にYouTubeにアップロードされたMacroblankの代表作である『絶望に負けた』が現在、40万を超える再生数に達しているからです。
アップロード時点の情報は不明ですが、2022年5月ごろ時点での再生数は15万~20万程度(それでも多い!)。ひと月ちょっとでそこから倍以上の再生数を伸ばしているわけです。
この短期間での異常な伸びは2022年の事象としてとらえても何ら問題は無いと思われます。
比較してみると、黄金期から活動を続けるdeath's dynamic shroudの代表作『
今年2月リリースの『ラストチャンス』は30万回再生、そして5月リリースの『痛みの永遠』に至っては50万回再生と破竹の勢い。
これは何が起こっているのか。
そもそもBarber Beatsと呼ばれる音楽は、完全に新しい音楽とも言い難いもので、簡単に言えばVaporwaveとトリップホップとの融合体。
既存のラウンジミュージック等をVaporwave的手法で再定義し、トリップホップに接近させた、ただそれだけ。
ただそれだけことなんだけど、それを最初にやったパイオニアであるHaircuts for menが偉大だったのです(Haircuts for menの2016年作はなんと約140万回再生!!)。
この一連のBarber Beatsが他のVapor関連と異なっているといえるところは、(憶測ですが)今までのリスナー層とは違うということです。
これらの作品のコメント欄には「ヨガをしながら聴いてます!」だとか「寝るときにいつも聴いてるよ!」と言ったコメントが多く、バックグラウンドミュージック的な聴かれ方をしているようです。Vaporwave自体も電子世界のBGMという見方もできたと思いますが、Barber Beatsはよりリアルで生活に溶け込んでいるように思えます。
そういったこれまでのリスナー層とは違った層に享受されるようになったことは、とっくに過去のものにされてしまったVaporwaveを新たなフェーズに運ぶ可能性を持っていると思われます。
ということで、今年リリースの中での私のお気に入りがこちら。
同じくインターネット関係で私が最も関心を持っているのがインターネットレーベルのDismiss Yourself。
Dismiss Yourselfについては、Bandcampの記事を和訳してくれている方がいらっしゃるのでそちらを。
このDismiss Yourselfは新興ジャンルのHexDの総本山的立ち位置にあるレーベル、コミュニティ。
HexDと言われてもピンとこない人も多いかと思いますが、今年5月に快作『Dataprism』をリリースし話題となったFax Gangがその代表と言えるグループとなります。
ここで一旦、『DataPrism』の話を。
『Dataprism』は確かに素晴らしく、多くの人から注目を集めるには十分な完成度の作品でした。しかし、HexDという特異なジャンルの中では逆に異質さがある内容でもありました。
あえて言葉を選ばずに言えば「ちゃんとしすぎている」。
これは悪いと指摘するわけでもなく、ましてや「HexDとはこういうものだ!」と自分の知識でエバるわけではないとうことは理解して貰いたいのですが(そもそも私自身も本質は分かってない)。
HexDは疾走する倒錯的フェティシズムの反映、ネガティヴイメージと狂気の中に流れる作者の時間を感じさせる耽美主義であると考えています。
私が『Dataprism』に対して感じたのは、前作以前と比較して、あまり自己中心ではなく集合知的イメージに裏打ちされたノスタルジーやドリーミーを纏う作風になった、ということです。
楽曲自体は一般的(?)なHexDと根本は一緒で、意図的に下げられたサンプルレートによるビットクラッシュは常にあり、荒々しく音の割れたビートも使われている。
ですが、特徴の一つともいえる妙にきらびやかなサウンドは用いられず、その代わりにシューゲイズ的な浮遊感のあるサウンドが取り入られています。
元々、HexDの中でもそういった傾向の音作りを試行していたグループでもありましたが、ラストトラックに客演として参加しているParannoulの影響があると思われます。
その結果、近年のシーンと接近した形になり、複数のヴィジョンを通した幻想的な美しさへと変貌。そして、自己完結型の美学からインディーシーンと共有可能な形になったため、より多くの人に聴かれることになったのかと思います。
私はFax Gangのファンであり、これからも聴き続けるアーティストの一つと確信していますが、HexDとは異なるベクトルに成長する素養が垣間見えた作品だったのではないかと感じています。
Dismiss Yourselfに戻ります。
上半期のDismiss Yourselfのリリースだけを見ても幅広い音楽があり、そのすべてがエクスペリメンタルであり、クレイジーであると言えます。
例えば、Viper the Rapperのコンピレーションアルバム。
多くのアーティストにとってたどり着くことが困難なアウトサイダーミュージックにクラウドラップという手法で行きつくも、印象的なアルバムジャケットによって存在を不安定なものにされてしまったViper。
そんなViperのコンピレーションをリリースし、ViperをViperとして再定義することに成功しました。
1月1日には、年明けとは思えない内容のCacolaによる『Ruby Rose』をリリース。
2021年にはユニークなサンプリングやサウンドを用いた良作である『A Gift To Us All』を発表したCacolaでしたが、今作は様々なヒットソングの強引なマッシュアップ。
前作の「明るい切なさ」のような雰囲気から一変、「暗い陽気さ」のような、私怨すら垣間見える意味ありげな作品となっていました。
そんなDismissのリリースの中でも特によかったのがTeam Mekanoの『mekanoworld.xyz』。
Team Mekanoはチリを拠点に活動するHexDのDJやコンポーザーの集団。
ジャンル的にはHexDではなくハッピーハードコアなんですけど、質感が独特でとても良いのです。
メンバーの全員がHexD関連のアーティストでありながら、各々が違ったアプローチの仕方をしているためTeam Mekanoのサウンドも幅広い展開を持っています。
チップチューンなどのハイピッチのサウンドを用いたクリエイトが印象的なDJ Daddy Yonquiは#1、#5はユニークなサンプルを多用した弾けるダンサブルな仕上がりに。
トランスとHexDの完璧な融合を完成させたAnthony1 による#3でフリーフォームで腕の良さを発揮し、#7はシリアスに始まり徐々にビットクラッシュしていくブレイクコア。LoL1L00pzはナイトコア化したラテントランスのスカスカなMixなどを多数投稿していますが、#6、#8ではロリコアを。
#2と#10のDJ Tekkeñoはドラムンベースを基調にしたナイトコアで堅実な出来。
続いても、ネットレーベル。
Vaporwave作家のEsprit 空想で知られるGeorge Clantonが主催する2015年設立の100% Electronicaがかなり面白いです。
ご存じない方のために軽く説明。
レーベルの発足当初はGeorge Clanton(あるいは、Esprit 空想)の諸作を中心としたリリースで、そのほかにNegative GeminiやSurfingといったVaporwave、Proto-Vaporの代表とされるSoftwareの『Digital-Dance』の再発といったような、いかにも的なレーベル。その後も徐々に拡大していき、現在ではDan Maison、FM Skyline、Windows 96、death's dynamic shroudなどの黄金期から成熟期を代表する著名な作家が次々とリリースし、現在のVaporシーンを代表するレーベルになりました。
そのような中で2017年にはネオアコバンドのMicrodisney(The High Llamasのショーンが以前に組んでいたバンド!)の『Everybody』の再発。2021年には2010年代に活躍したドリームポップバンドのSmall Blackの諸作をリリースなど、独特なセンスの展開もしていました。
そんな100% Electronicaがさらに拡がりを見せたのが今年の上半期でした。
まずは、2月25日にリリースされたCaroline Loveglowの『Strawberry』。
100%の新たな拡張性を確信させるその内容は蒸気的サウンドのレイヤーによるシューゲイズ/ドリームポップ。2000年代以降のニューゲイズに則ったサイバティックなドリームポップ世界と王道なシューゲイズを踏襲した素晴らしい内容でした。
全体を通しての冷たくも柔らかな優しさのあるサウンドはパステルな郷愁感、繊細な感情の機微、高揚するトリップを素晴らしく演出。
モダンなリバーヴとエレクトリックピアノから幕明ける#1は耳馴染みがよく構築されており、20年代のシューゲイズアンセムに相応しく、不明瞭なレイヴへのノスタルジーと現代的なセンチメンタルが奏でられています。#3や#8のアンビエントな夢想空間はCaroline Loveglowの精神世界がよく描かれていています。
そして3月25日にリリースされたブルックリンのコンポーザーVitesse Xの『Us Ephemeral』。
プログレッシブハウスを軸にしたジワジワと突き進む鮮やかなエレクトロニックに心を掴まる内容。
サラサラとした質感の消え入りそうなボーカルは蒸気のようでVaporレーベルの感覚を持ちながら、内向きな衝動の溢れ出るレイヴミュージック。
#1や#2、#9は蜃気楼のようなドリーミーサウンドと千変万化するダンスミュージックは不安定さと芯の強さがしっかりとあります。
#3や#5などのポップさとクールさを両立させたダンサブルな楽曲は曖昧な表情を見せながら、確かな身体性を持ってどこまでも連れて行ってくれる力強さがありました。
年を経るごとに進化していく100% Electronicaのプロジェクトはとても面白くて、今後もより一層の発展を遂げる重要なレーベルになるかと思います。
ロンドンを拠点とし、アジア圏の音楽を発信するCHINABOTからも紹介。
CHINABOTは昨年にリリースした京都のJap Kasaiの『OWN℃』が話題になりましたが、今年も独自路線を邁進。
今年の1月には韓国出身のIDM作家のJaeho Hwangの『Inner-self』をリリース。自国のアイデンティティを強く反映した退廃的IDM/デコンストラクテッドクラブでした。
そして、5月4日にはYokubariによるEP『Sakai』が公開されました。
YokubariはLightning BoltやBlack Dice等のノイズロックシーンで高い評価を持つドラマー、Hisham Bharoochaの別名義になります。
Bharoochaの出身は新潟県で、日本とミャンマーにルーツを持ち、現在はニューヨークで活動をしているといった経歴を持っているアーティストで今作からも多様な文化の流れを感じます。
『Sakai』と名付けられたタイトルは精神的、肉体的な隔たりを表していて、自身の受けた"外国人"としての扱い、環境の不明瞭な辛辣さを物語っています。
ですが、Bharoochaにとってのこの作品はそれに対する怒りの表現ではなく、誰しもが持つ他人との違いや不安を肯定することであって、その表明としての自己のルーツの引用でした。
日本の雅楽器や歌舞伎のサウンド、ミャンマーの民謡のサンプリングを用いたニューヨークのエレクトロの成立で、結果的に愛情を持った作品になっています。
テキサスで活動を続けるStrawberry Hospitalの『Data.viscera』は今年に聴いたEPの中で、現時点で最も素晴らしい内容でした。
strawberryhospital.bandcamp.com
ポップパンクやハードコアとトランスを経由したトランスコアにブラックゲイズを混ぜ合わせたStrawberry Hospitalの音楽は他に類を見ない画期的で魂を揺さぶられる激情を持っています。
全てを排他するブラックゲイズ的ノイズと光沢のあるチップチューンやボーカロイドのエフェクト。言葉では溢れ出るエモーショナルな衝動の投影。歪んだまま加速し続けるドラム。
その全てが10分にも満たないこのEPに詰まっていて、他には感じられない快感と共に不思議な幻影を胸に落としていきます。
誰しもが、というわけではないですが、この刃が心にぶっ刺さり錆び付いて抜けなくなる人がきっといると思います。
ニューヨークの音楽家Lilien Rosarianは4月16日に新作をドロップ。
『Every Flower in My Garden』と名付けられたタイトルの通り、このアルバムはLilien Rosarianの作り上げた庭を巡る小旅行であり、多種多様に咲く花を見回すことができます。色鮮やかな花や透き通るような清らかな花、歪で花とは呼ばないようなモノからもはや花ではないモノまで様々。
地面には蓄積された音楽が肥料となって根を温め、宇宙空間のように漂わせる空気が流れる。不思議な形の虫の羽音や初めて聴く鳥の鳴き声、その中で揺れるハンモックに横たわるような錯覚を促していきます。
オープニングナンバーの『i'm wide awake』は扉を開けて未知の庭園に足を踏み入れる心の不安、過去の出来事の追想をフラッシュバックさせるサウンドコラージュから始まり、やがてそれを解き放つノイズサウンドが耳を通して肺に満ちる。そして聞こえるグリッチは水の流れや生命の営みを知らせてくれます。
#2は温かくて触れたくなるような美しさを持ちながらも本質に毒々しさを持つ奇妙な花、#5は蔦を纏った荘厳な巨木に咲くモノクロのホログラム、#8では意思を持った動植物に語りかけられ次第にオーケストラチックに広がっていくサウンドスケープ。
最後の『revery hour』で、この全てが泡沫な夢であったこと気付かされ、包まれる豊かな空気感がそっと現実へ帰る橋渡しをしてくれます。
夢であってほしい現実と現実であってほしい夢の間で感情を振り回される私たちの生活に、その中間として居てくれる今作でした。
UKのサイケデリックミュージック集団のThe Soundcarriersの1月21日の新譜である『Wilds』は宇宙旅行で銀河に漂う惑星たちの音楽集のようなアルバム。
the-soundcarriers.bandcamp.com
肉体という器をそこに感じさせながらも、長らく体験していなかった内臓の浮き上がるようなトリップ感は絶妙。
アルバム全体が決して派手ではない音作りで構成されていて耳馴染みの良さがありつつ、非凡なメロディアスさを維持。実態を掴みきれない魔法のような霧の中から聴こえてくる楽曲たちは我々を陶酔させます。
積み上げられた過去から現在のサイケデリアの最も分かりやすく見事な完成度であり、露骨な革命性は無いものの、センスに裏付けされた十二分に満足できるネオサイケデリアの良作です。
ノルウェーはオスロのKathrine ShepardによるソロプロジェクトSylvaineも今年3月4日に新譜を発表。
『Nova』と名付けられた作品は現代社会、人々の精神、イデアに必ず内在する暗黒世界とポツポツと輝く新星を描写。
野生的で破滅しそうな勢いのシャウトとHope Sandovalのような空間を制圧するボーカルによる、誰もを地上と天界を彷徨わせる追体験への導き。
ブラックゲイズ、ポストメタル、アートロック、ドリームポップなどの幻想させる音楽をスムースに繋ぎ止めるイーサリアルな音響で魂を遊泳させ、有機的に動き回る空虚さのの本質を築き上げていきます。
#1の『Nova』は神々しい賛美歌であり、引き込まれる美しい歌声で静かに歌われる新星の誕生は、これから来る悲しみと憂いへの心構えをさせてくれます。
そして続く#2『Mono No Aware』。恐らく日本語の「もののあはれ」から来ていると思います。歌われるのは「諸行無常の響きあり」や輪廻転生、破壊と想像といった東洋思想の反映とも取れる言葉たち。そこにもののあはれという情緒を取り込んだ美学には、無常な刹那の輝き、それこそ新星への渇望を感じられます。
そして、それはこの作品のコンセプトとして昇華されオーラとなっています。
最後に、3月18日にリリースされたトルコ出身でドイツで活動するAnadolの2ndアルバム『Felicita』。
こちらは現時点での今年の私的最高傑作です。
音楽、遺伝子、歴史、身体、空間、それ以外にも数多くの事物で組み上げられたピラミッドの上に立ち、優雅に怪しく立ち込める煙がはっきりとした形を持って顕現する今作は、Anadolの持つ卓越したセンスで緻密に構成される傑作です。
明確なジャンル定義には一切当てはまらず、異国の馴染みの薄いトルコ民謡・ポップス、フラメンコなどの情熱、クラウトロックの異質な響き、スペースロックの雄大な戸惑い、ジャズの揺るがない確かさ、その全てを着実に吸収し、誰もたどり着けない境地に至っています。
#1では、そびえる山脈を麓から見上げ圧倒され、そんなことをお構いなしに小鳥が会話を続ける。近寄ってくる安いトラックのエンジン音のようなものはその瞬間に世界に我を取り戻してくれ、心臓の波動をドラムが奏で始めます。景色を色づけるギターの挿入とジャギーな語り調の歌声、音数はだんだんと増していき、地球のそこら中を形作る。解き放たれ魂は次第に空に浮き上がって、単音で鳴るシンセサイザーは宇宙に到達したことを知らせてくれます。
#2に入り、不穏なベースラインと奇怪なサウンドレコ―ディング、異国の言葉での雑談、フリージャズ、前曲の延長にある異世界の風景が続きます。自由で囚われないサウンドコラージュや楽器の数々は、Anadolの音楽体験の豊かさを雄弁に語ります。
#3はゲームミュージックのようなエフェクトがかったシンセが空想のアラビアを描き、まるで見知らぬ砂の惑星で出会った民族との交流のボイスメモのような印象を受けました。
#4は15分超の大作。ダークジャズやアヴァンフォークの特徴を持ったダークアンビエントでブラックホールで見る星々の記憶のごとく膨大な歴史を早送りで脳に送られる異常さを感じます。タイトルにあるTrenは汽車を意味するトルコ語で、汽笛や車輪の音は銀河鉄道を思い出させる部分もあります。
最後のトラックである『Felicita Lale』は情熱的なワルツ。懐かしくて暖かい大地の匂いに触れ、地球から見た夜空の星々に思いをはせ、燃え盛る炎と踊る人々を眺める切なさだけを残して終演を迎えます。
このアルバムは歌詞が公開されておらず、トルコ語を理解できない私はイメージだけでその詩を補完することしかできず、それがとても心残りになってしまいました。
もし、トルコ語話者の方がいたら、リスニングして私に教えてください。
以上が上半期に聴いてよかったもの、思ったことのまとめでした。
感覚的に今年の音楽は「重み」が重要なキーワードになっているかなと思います。
「重み」にも様々なベクトル、捉え方があります。
歌詞のメッセージの重み、聴きやすく吹き抜ける軽快さ、蓄積されたエッセンスの重厚感、太く地に響くようなサウンドのヘヴィさ、などですね。
下半期もそういう点に注目して、いい音楽を見つけれたらなと思います。
もしよろしければ、コメント等で感想をもらえると喜びます。
好きそうな新譜情報でもうれしいです。
最後に上記以外の良かった新譜を10枚紹介します。
読んでいただきありがとうございました。
-
lorana.mze / Bacleo
-
Parallel Weaving / Shen Jie&Shen Jing
-
PAINLESS / Nilüfer Yanya
-
Deception Falls / exociety
-
Shine On / CHANCE デラソウル
-
Life Cycles / iANO
-
I / Vieri Cervelli Montel
-
Now She's Gone / DΛRKNΣSS
-
Beja Power! Electric Soul & Brass From Sudan's Red Sea Coast / Noori & his Dorpa Band
-
Nightlord / Immortal Nightbody